FDR ing

flying disc radioのWebマガジン

散歩グラフィー ~第11回 キューバ編③~

約 6 分

散歩グラフィー ~第11回 キューバ編③~
写真と文:秋房和伸

ぼったくりの洗礼
首都ハバナで数日過ごし、次の目的地トリニダーへ向かうために、ホテルの近くでバスターミナルへ向かうタクシーを拾うことにした。
激しく車が行き交う道路で、なんとか1台捕まえて値段の交渉をすると、だいたいネットなどで調べていた金額通り。
車が多いから早く乗れと急かされつつ乗り込む。

このタクシーは座り心地は悪いし、ドアが壊れていて走行中に開くし、ドアの取っ手も取れる寸前といった感じでガタガタであった。
でもそれはそれは楽しかったりする。

そうこうしているうちに、無事バスターミナルへ到着。
最初に言われた金額を払おうとしたら、おい、これは一人分だぜ?もう一人分よこせ、的なことを言われる。
げっ、こりゃあボッタクリだ!と思ったものの、最初に人数まで確認していないし、バスの出発時間もあるので、仕方なく払い荷物を持って外へ。
するとまた運転手に呼び止められ、おい、このお札1000円じゃなくて100円だぞ、あと900円足りないぞ、的なことを言われる(金額は適当です)。
札を何枚か渡していたので、この時は「あれ?間違えたかな?」と思い、1000円渡して100円を返してもらう。
ただ後からわかったことだけど、このパターンで金を稼ごうとする奴らがキューバにはたくさんいたのである。
なのでキューバでお金を支払う時は、かならずお札を1枚1枚ゆっくり見せて確認しながら支払うことをオススメしたい。
特に20代~40代前半くらいまでの男性にご注意!

長距離バスで、トリニダーへ
バスターミナルはとても小さく、品数の少ないコンビニ的な店と、2階に小さなカフェが併設されていた。
そしてクーラーも効いていないため、とても暑い。

バスのチケットは日本にいる時にネットから予約と支払いをしたのでちょっと心配だったのだけど、無事にバスに乗ることができ一安心。
バスは噂通りクーラーがかなり効いていてちょっと寒いくらいなのだけど、思ったほどは寒くなく快適だった。
ただ道路がガタガタな箇所が多くて小刻みに揺れているので、あまり寝ることはできない感じだったけども。

途中、南国ぽい感じの休憩所に停車して昼食。
そんなに派手ではないし、ノラ犬もウロウロしてたりするけども、なかなか綺麗に作ってあって、観光には力を入れているんだなあと思う。
お昼ご飯はサンドイッチとビール。
ビールやカクテルは安いので、キューバに来てから毎日昼間からお酒を飲めて、非常にいい気分である。

再びバスに乗り込み、動物と山ばかりの景色からだんだん家が増えてきて、凄まじく道の狭い、ガタガタの石畳の道の町にやってきた。
よくこんなところバスが走れるなあというくらい、道も狭くて人もいるので、ちょっとヒヤヒヤであった。
そこが第二の目的地、世界遺産にもなっているキューバ中部の町「トリニダー」だった。

バスを降りると、ターミナルというか空き地としか言いようのない敷地の端にロープが張ってあって、
そのロープの向こう側に、人力車やホテル客引きと思われる人たちがずらっと並んでいる。
みんな決してロープのこちら側に入ってこないけど、これからあれを突破しなければならないのかと思うと、なかなか大変である。

ただ、ホテルは歩いて15分くらいなのだけど、この町の道は本当にガタガタでトランクを引いて歩くのにはキツそうなので、人力車に乗ることにする。
タクシーの件もあり若干警戒しつつ、ロープのこちら側までぐっと乗り出してきたおじさんに頼むことに。
いい人そうではあったけど、念のためその金額は1人分なのか2人分なのか、全部で払うのはこの金額オンリー?オーケー?としつこく聞いて、乗り込んだ。

走り出すと、思った通りめちゃくちゃゆれるしゆっくり。
そして坂道も多くて、乗っているこちらが心配になって、思わず大丈夫か声をかけたけど、おじさんは大丈夫とニコニコしている。
おじさんの腕や足はめっちゃ太くて、この道を毎日何往復も走っているのかと思うと、すごいなーと思う。
よりによって僕らのホテルは高台の上にあったのだけど、ホテルが見えたところで、もうここで大丈夫!と言って降ろしてもらった。
支払いは最初に言ってた金額通りで、めちゃくちゃ安かった。
ハバナのタクシーより全然いい仕事してるのになんて正直な人なんだと思った。

トリニダーで泊まるのは、家族で経営している小さなホテル。
ホテルの主人もすごく良い人で、宿泊費も安いので最高である。

ちょっと休んでから晩ご飯を食べに外へ。
ホテルの目の前にある廃墟の教会がライトアップされていてとても良い感じ。
この日は移動で疲れていたので、晩ご飯だけ食べてすぐにホテルに戻って就寝。

機関車に乗る
翌朝。
特にどこに行くとか何も決めずに来たけど、この町には鉄道があって、古い観光用の機関車が走っているとのことなので、乗ることにする。
駅に行く途中、一人のおじさんから話しかけられる。
なんか適当な話をしながら歩いていたら、カバンからおもむろに葉巻を取り出して、プレゼントだという。
葉巻といっても安そうなやつなので、ありがとうと言ってそのまま一緒に歩いて行くと、別れ際におじさんが1CUC(約113円)くれという。
なんだ、くれるんじゃなかったのか思いつつ、悪い人ではなかったし葉巻ももらったので、まあいいかと思ってお金をあげた。
やはり油断するとすぐにお金をくれと言ってくる人が多いんだなと思う。
そしてモノをタダでくれるという人はほぼないと思った方が良いということも。

葉巻のおじさん。ホントに悪い人ではなかったけども。

そうこうしているうちに、町外れの駅にたどり着いた。
最初、大きめの建物の近くに機関車が見えたので近寄ってみたら、それは駅ではなくて車庫みたいなところだった。
で、その車庫の近くに座っていたおじいさんに駅はどこって聞いたら、反対側だよと指をさして教えてくれた。

そんな駅っぽいのあったかな~?と思って来た道を戻って行くと、世田谷線の駅をさらに小さくボロくしたようなホームのようなものがあった。
近くまでいくと目の前にチケット売り場があり、やはりこれが駅なのか、良いなあと思った。

ちなみにこの観光列車は、かつて奴隷を働かせていたロス・インヘニオス渓谷へと続く鉄道。
トリニダーの町も、かつては奴隷貿易なんかでずいぶん潤っていたらしい。
そんな歴史もあるけれど、鉄道から見える景色は本当にのどかで、つい先日までいたハバナとは全然違い、すごくリラックスした気持ちになれる。
ギター弾きのおじさんが同乗していて、ずっと歌を歌っているんだけど、それも良い感じだった。
こちらはちょっとだけ動画をまとめた。

ちなみに停車するのは2箇所で、一つは農場で働かされていた奴隷の監視塔がある「マナカ・イスナガ」と、廃墟になっている「砂糖工場」。
砂糖工場の方は、部分的にカラフルに色を塗り直してたり、謎のオブジェを作ってあったりして、廃墟好きからするとちょっと残念な感じもあったけども、「マナカ・イスナガ」は、奴隷監視塔から見える景色や、そこに集まっているモノ売りの人たちが主に布を売っていて、その布がなかなか良かったので、何枚か買ってしまった。

そんな感じで、今回はこれで終わり。
キューバの話はもう少し続く予定。

About The Author

Kazunobu Akifusa
グラフィックデザインを中心に、映像、音楽、DJ、工作のワークショップ、フレデリック・パカ研究家などアレコレ。
音楽は秋福音とマルシア・ガルケスという二つのグループで、DJはAsufikAという名前で、Tokyo Obscure WavesというNew Waveイベントで主にやってます。
散歩と旅行と自転車、ふらふらすることを好む。

Leave A Reply

*
*
* (公開されません)