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FDR ing SIDE REPORT〜 イラストレーター クボタ カ(ヅ)シゲさん〜

約 11 分

イラストレーター クボタ カ(ヅ)シゲさん

今回は現在イラストレーターとして活躍し、アニメの業界にも携わった経緯をもつクボタさんに取材をさせていただきました。

鈴木:初めてお会いしたのはFDRのイベントに来ていただいたのがきっかけでしたよね
6年前!!

クボタさん:はい!お久しぶりです~

こんなテンポで始まった。懐かしくもあり、興味深いひととき。
いったいどんなお話がお聞きできるのか♪

様々な面で昔から厳しいと言われているイラストやアニメの業界。
取材を通して感じたことは、ペンを持って描くコト、それは画角をスケールオーバーするほどに熱意や希望が絶えず溢れているように感じました。
それではFDR×イラストレーター クボタさんをお楽しみください。

八月に差し掛かるある日、世の中では夏休みの空気がいっそう漂い始めた頃。
神保町にある「カフェ ディゾン(DIXANS)」へ向かう。

到着すると、二階へ。
奥の席を見渡すと、今回の取材に応じてくれたご本人、クボタさんを見つけました。
何やら描き物に集中しているようです。

階段の壁一面にはアート作品が描かれている

 

クボタさんのお仕事を教えて下さい 

クボタ:以前からイラストやアニメの業界に興味があり、そのお仕事に関連したビデオ編集という部門で2年ほど携わりました。
内容は演出意図に従って、カットをどうやって繋げるか。
具体的にはTV用やDVD用等、各メディアごとに音も含めて編集する会社でした。
その中でアシスタント業務に従事してました。

鈴木:出来上がった作品へ最初に触れる部門ですよね。
神経を使いますよね!

クボタ:そうですね、出来上がった作品を編集して局へお渡しするまでなので。

鈴木:それはどんな現場でしたか、空気など知りたいです。

クボタ:深夜のテレビアニメでしたので、製作委員会の方々、とりわけ、制作会社/出版社/メーカー/などのプロデューサーやディレクターが集まって作品について会議をしていました。
納品前の最終チェックなので緊迫した空気での作業が多かったですね。

鈴木:それはかなりのプレッシャー!肩がガチガチになりそう、イメージが伝わってきます。
運営を出資しているのは何社も関わっているということですよね?

クボタ:そうですね。作品によって委員会に入る会社数は違いますが、複数社が出資してるケースが多いです。

製作委員会は常に存在するのですか?

クボタ:製作委員会はアニメのシリーズが終わると一旦解散し、また始まると集める体制ですね。

鈴木:会社ではないんですね。

クボタ:どんな監督さんでも大体はそうやって制作会社や監督、音響や制作会社、外注会社などをハンティングしています。
また、監督やプロデューサーなどでアニメーターを集めると思うんですけど、作風に合わせて人選されてるみたいです。
アクション向きな役者やヒューマンドラマ向きな役者がいるように、アニメーターにも得意不得意があります。
それらを見極めつつ判断されてる様子でしたね。

鈴木:映画などのキャスティングに近いですね。

20年前からアニメの作画は未だに1枚200円と聞きましたが現在もですか?

クボタ:そうですね。
映画や案件で変動するケースもありますが、テレビシリーズでは概ね変わりないと思います。
変わってないです。
制作会社がアニメを一話作るのに1500万円前後、大きい金額に見えますが人件費や管理費や原作料も含めるとなかなか大変だと思います。
僕が行ってたビデオ編集会社は外注会社でしたので製作委員会に入ってなかったですが、そういった人も含めると200人~300人は関わってるとおもいます。

鈴木:うわぁ!それは足りないですね!
あと、やはり帰れない日はありましたか?

クボタ:たくさんありました。
スケジュールが圧迫されると、物理的にも精神的にもプレッシャーを感じる現場になっていくのですが
皆さんの熱量もまたすごいので、あてられる形でモチベーションを作ってましたね。

今現在は外資企業でのイラストレーターのお仕事ですよね、その当時とは近くても少し違う内容のようですが

クボタ:やっぱり描く事にも携わりたくて!

鈴木:なるほど!僕自身もデザインの現場で働いていて。
関係するものに興味が湧いてくるのと似ていますね!
すごくわかります。
お仕事を変えるのに何から初めましたか?

クボタ:少しづつその道のお仕事をしたり、イラストレーターとして展示会を開いたり、グループ展に参加したりしてました。

鈴木:かなりの意欲ですね!素晴らしい。

クボタ:今は作家のような活動ではなく企業の中でのお仕事ですが、結果的に活かされていると思います。
あと、誰かと組んで一つのものを作りあげるのが好きなんですよね。
そこにはチームワークが大切で、スポーツのような達成感を感じますね!

鈴木:みんなで難題を乗り越えることはとっても良いですよね。
自分もFDRの運営などを通して同じようなことを感じます!

クボタさん、関係ないですがそのTシャツ、ファミコンのくにおくんですよね

クボタ:笑

鈴木:あれ?ファミコン世代でしたっけ?

クボタ:僕の地元は鹿児島県の奄美大島でして、少年期の当時は物流が遅くてTV番組も制限されていました。
だからブームが遅れてきて、小学生前半までファミコンやったりしてました。
世間ではゲームボーイポケットとかが流行ってるときに。

鈴木:そうだったんですね!でも、好奇心や執着心を鍛えるには大切だと思いますよ~
なんでもすぐに手に入る現在は、あまり良いとは思えないですね。

クボタ:そうですね!それも関係しているのか、都市部から出身地とは違う土地に移住して働くiターンの方も全国的に多いいみたいですね。
「無いところ→有るところ」ではなく「有るところ→無いところ」という昔では考えられない図式が面白いですね。
実際、奄美大島でもiターンの方にお会いしたことがあります。
その方は群馬の方でしたね。

鈴木:僕も友人に何人かいます。
その方々は地方に貢献したいという想いもあるようです。

クボタ:確かに、それもありますよね。
あとITの発達があって大都市との距離を縮めてくれてるように感じます。
今まで取り逃がしていた若者層が来てくれるくらい。

クボタさんが地元を出た理由を教えてください。

クボタ:他の地域も同じだと思いますが、行きたい大学や、やりたい仕事がないのを感じまして。
高校卒業後に島を出ました。

鈴木:確かにそういった理由は多いですよね!その後はどんな道へ行ったのですか

クボタ:はい、京都の大学へ進学しましたね。
そこで日本で初めて開設された学科として知られる漫画学科へ入りました。
僕が専攻していたのはカートゥーンと言われる風刺画でした。
ダーウィンの進化論(その他に、ビゴー「魚釣り遊び」などが有名)などの、あのようなイラストですね。
そこで北斎や漫画史などのルーツを辿ったり、学んでました。

鈴木:なるほど!とも思いましたけど、風刺画を専攻していたのは意外ですね。

ショーケースには人気パティスリーのケーキが並ぶ

 

現代の描きての現状と傾向について

クボタ:今現在イラストレーターは世の中にいっぱいいますよね。
自称でなれる時代だとおもます。一番の理由は道具が安価になったことです。
ソフトも月額制なり、誰でも手が届くようになったんですよね。
クリップスタジオなんかは1万円前後です。ちなみに僕が使用しているのはSAI(サイ)です。
これは5千円くらい!

鈴木:安いですね!

クボタ:でもフォトショップより、できることは少ないんですが線は描きやすいのでオススメですよ。

誰もが描ける環境が手軽に用意できるので、イラストを描く人のボトムがアップしたのを感じています。
アマチュアでも上手な人が増えてますよね。

あと、場所を選ばず、iPad proなどのタブレットを使って描く人もよく目にしますね。

鈴木:紙から離れているように感じますが

クボタ:そんなこともないようです、紙の価値が見直されている時代でもあるんです。
実際にアナログで描く作家も増えてると思います。
デジタルで描くにしても、あえてアナログのタッチを再現する手法も増えていますね。

鈴木:以前も作曲家を取材した時に聞いたことがありました。
あえてクリアにしない音で、臨場感を出す。少し似てますよね!

クボタ:確かに同じですよね!共通点はあります。
カセットテープのブームがあったりすることで感じます。

2DCGでも動かせる時代でもあります、平面的な絵を動かす手法が目立っては来てますね。
そこでも線をあえて荒さを残すなどが増えてますよね。

これは自論ですが。

だんだんと30-40代の作家が社会的に力を持つようになって、やっと影響を受けた、やりたかった手法を表現できる時代になったのかなとも思います。
高橋留美子を見て育った世代が、涼宮ハルヒ等の丸い感じのアニメを生んでるように、馴染んでたものがにじみ出る感じですかね。
最近、90年代のファッションなどがリバイバルされているのもそう思います。

鈴木:流行の概念が変わっきてるのかもしれませんね。
日本特有というか、SNSも相まって意識しない傾向を感じますよね。

海外のアニメーターについて

クボタ:海外の人が幼い頃に日本のアニメ文化に触れ、その影響で日本と同レベルの作品を制作し。
日本へ逆輸入する動きも起きています。

鈴木:なるほど!めぐりめぐってますよね。好きという熱量のカタマリですね!すごい!

クボタ:これだけの注目があるのだから、日本のクリエイターは世界を舞台に見てもいいと思います。
だんだんと、良くなっていると思いますが。
世界への展開は遅れているように感じますね!
世界では日本はマーケティングの対象なのに、世界をターゲットにした日本のクリエイターって一握りに感じるんです。

鈴木:確かに僕もそう思います。
展開やマーケティングをリードしてくれる存在が必要ですよね。
ジブリでいうと鈴木敏夫的な存在の人かな

クボタ:そうですよね!熱量とはいえ、食べていける仕事でないといけないので。

あと「けものフレンズ」のプロデューサー、福原慶匡さんのようにミュージックステーション出演に合わせたPRやニコニコ動画とのコラボレーションを試みるなど、新しい戦略を取り入れることも大事だと思います。

受け入れられるまでが難しいですが、少しづつ、意識が変わっていったらいいなと思ってます。

鈴木:業界的に「空気を壊さない風潮」も感じます。
そこをどうやって改変していくかも大切ですよね。

奄美大島では特有の風潮などありましたか?

クボタ:あります!少し閉鎖的な話ですが、高校の時にバスケ部を辞めた時ですね。
進路を考えて、美術部へ変えたところ、からかわれましたね~。「美術部=芋っぽい」」ような風潮はありました。

あと、狭いコミュニティなので、基本的に隣人にはやさしい方が多いように感じます。
ただ、観光客に対しては人当たりいいけど、移民は少し警戒するような傾向があると思います。
そういう点では、日本の業界と島のコミュニティは似た構図にも感じますね。

影響を受けたアニメを教えてください。

クボタ:松本大洋の「ピンポン」ですね。
当時中学生だったんですが、かなり影響されました。
クールなスマイル役に憧れました。
原作も映画もキャラクターの設定も好きでしたね!

以前のアニメは、悪がいて正義がいてそこに両者の背景があって、
そういった、わかりやすい設定が多かった印象なのに。

「ピンポン」は主人公に目的はなく、環境が主人公をヒーローへと作り上げるような設定。
新鮮で身近にも感じました。

鈴木:ヒーローになりたくないけど、やらなきゃいけない。
エヴァンゲリオンも同じでしたね

今現在のアニメについて

クボタ:震災の影響もあってか、「ディストピアを描く作品」世界崩壊がテーマのアニメが多いいですよね
崩壊した世界で主人公が強くたくましく生きる。

鈴木:過去の作品で、崩壊から始まるアキラもそうでしたよね!
もしかしたらサイクルが存在するのかもしれないですね。

海賊版などを取り締まる法律についてどう思いますか?

クボタ:これってどうとらえていいか難しくて、クリエイターの目線でいうとダメだけど。
逆にこういう場所での露出で、知名度が上がるのも事実だとは思います。

どう付き合うかを並行して考えるべきだと思いますね。

僕自身は海賊版はもちろん手を出さないです。
でも、ガチガチに規制してしまうと「買うほどのモチベーションはないけど見たい」という層、
いわゆるライトユーザーがいなくなってしまう。
出版社やレーベル、TVなどライセンスでお金を取る業種は今後の在り方を問われてますよね。

海外アニメのサウスパークは、そういったライセンスを持ってる企業を風刺し、この規制をアニメで反対してみせました。
「そんな規制に時間を使ってないで作家は作品をどんどん作れ」という内容。
これは衝撃的でした。

鈴木:出版社の気持ちはわかりますけど、確かに強い規制は社会への浸透を妨げてしまいますよね!
国の法律については、年配の人たちの作っているようにも感じますよね。

クボタ:ですよね!ちゃんと選挙へ行きましょう♪

鈴木:あっというまでしたが、以上になります。
今日はありがとうございました!

今後もお仕事で地域での町おこしもされていくようです。
もしかしたらクボタさんのイラストをお目にかかることがあるかもしれませんね。

クボタさんに描いていただきました★感激!

ディゾン 神保町 (DIXANS)
東京都千代田区神田神保町1-24 1F・2F
03-5244-5618

About The Author

Hirosada Suzuki
高円寺を拠点に活動し発信する
人間好きなデザイナー
「未知と融合する楽しさ」を大切に
イベントやアートワークを展開

2012年からデザインを通じてアーティストを支援する。
PARODITCH ART WORKSを展開。
2013年からPRイベントFLYING DISC RADIOを開催
2015年にはFLYING DISC RADIO長野県の酒蔵「真澄」の松の間にて開催。
2017年よりFLYING DISC RADIOのWEBマガジンFDR ingを立ち上げる。

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