別物の音楽
小学生のクラブ活動でトランペットを吹き、クラシックギターで作曲を開始したということもあり、電子音楽にまだ抵抗のある時期が10年ほど前にありました。
それを克服したいと思い、一時期電子楽器の歴史を勉強したりしながら実験的な電子音楽からテクノ、エレクトロニカ等を古いものから新しいものまでひたすら聴いてみていました。
どんどん面白いと思うようになり、気付けば自分からもっと聴きたいと思って探すようになったのですが、ある時ふと目に付いた古いジャズのアルバムを聴いてみました。
ジャズは今でもあまり聴かないのですが、当時も殆ど聴かずそのアルバムも一度再生しただけでずっと放ってあったものでした。
かけてみると、その時期聴き続けていた音楽との明確な違いを感じました。
今でもはっきりと思い出せるくらい、新鮮に感じ驚いたのを覚えています。
その時自分にはそのジャズの音楽が「有機的」に聞こえて来ました。
ヴォーカルが入っている訳ではないのに、明らかに演奏する「人」が見えて来て生々しい音のする音楽だと感じられました。
その聞こえ方はどの電子音楽でも味わえなかった感覚で、改めて電子音楽が自分には「無機的」なものに聴こえているんだなと思わされました。
無機的な音楽が悪いと思っている訳では決して無く、今でも所謂ジャズより電子音楽を聴くことの方が多いですし、その無機的な音がクールで心地良いことは確かだと思っています。
自分にとってこれからも電子楽器のみで作られた音楽が、人間によって奏でられる生楽器の音楽に取って代わることはこれからも無いだろうなと、その時の体験で思いました。
逆に言うと、電子楽器、電子音楽は人間が楽器を持って歌うだけでは絶対に表現できない音楽を可能にしたのだなと改めて実感できました。