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FDR ing SIDE REPORT〜 作曲家小形 誠編〜

約 11 分

SIDE REPORT No.3
作曲家 小形 誠さんに聞く

正月も過ぎ、世の中も動き出した3月。
今回、FDRは作曲家として音楽業界の一線で活躍している小形 誠さんに話を聞いてきました。

作曲家って何?はもちろんですが、人間像もたくさん知ることができた一日でした。

音楽の裏側に関わっている人達は表に顔を出すことが少ない。
でも、こうしてお話しをすることで、お仕事としてどこかで交差している点があると感じました。

その人の独自な視点でそのお仕事を解いていく。
FDR×作曲家をお楽しみください。

鈴木:まずお仕事についてですが、具体的にどんな依頼がありますか。

小形:楽曲の提供、CM、映像コンテンツが多いです。YUKIさんのSTARMANや最近ですと乃木坂46「女は一人じゃ眠れない」「花王のリセッシュ」のWEBムービーの音楽などですね。

鈴木:有名アーティストさんのお仕事もされていますが、依頼はどうやってきたのですか。

小形:楽曲提供の依頼は基本コンペですね。某アイドルグループのコンペになると、1000曲以上集まることもあるようです。

鈴木:う、すごい!気が遠くなります。ゾッとする!本当に決まって良かったですね。
いつからこうしてお仕事ができるようになったんですか。キッカケも教えてください。

取材場所に協力してくれた邪宗門さん。「こんにちは予約した鈴木です」と言うと照れながら迎えてくれた。

 

小形:高校時代ではコピーバンドでギターボーカルを担当。
大学では音楽サークルに入るもオリジナルをやるバンドが無く、直ぐに退部。
その後、趣味で宅録作曲をしていました。本当、この時の音楽は趣味のレベルです。
そんな学生生活を得て、卒業後にCM会社に入社。
本当に忙しくて時間のない日々でした。徹夜で帰れないこともあり、入社当初から辞めたいと思うこともしばしばありました。
でも、入社は数回の面接もあって大変だったし。
「辞めるのは簡単」と自分に言い聞かせ、3年働きました。
すると自信がついたんです!「頑張れば何でもできる」そんな気がしまして、好きな音楽でもこのがむしゃら力(りょく)を試してみたい、そんな思いで脱サラをしました。
そして、会社を辞めて5年後にようやくロンドンブーツ1号2号の田村淳がボーカルを務めるJealkbの「キワダタサレタ美貌」の作曲で作曲家としてデビュー。周りからも「小形!ついにやった!脱サラしてついに作曲家になった」って認められたんです。
本当、嬉しかったです!!

鈴木:確かにこれだけ辛い仕事をやったんだって思って、自信につながるのはわかりますが、随分振り切りましたね★素晴らしい!僕自身も仕事で大きい企画を乗り越えた時に、何でも行ける気がしまして、このFDRを作ったのは事実、だからとても共感します!

鈴木:今まで作曲してきて、最も思い入れのあるエピソードなどありますか。

小形:いやー。どれも思い入れがあります!答えるのは難しい。
そうですね~。やっぱり初期の頃かな、2010年に2作目に作ったクロネコヤマトのCMの曲でTOKIO「Advance」を作詞、作曲をしました。
CMや各メディアで多く使われたので、かなり影響力があり、その年に紅白でも披露されました。実家の父は真面目な会社員なので、脱サラ当時、音楽家を目指すことを大反対してたんですが、紅白を一緒に見た時、すんごい喜んでくれて、ガラケーで、テレビ画面に映る僕のクレジットを写メで撮っていました。その後ろ姿を見て、少しは親孝行できたかなと僕は思いました。そういう点で、Advanceは印象深い曲です。

鈴木:良い話じゃないですか。反対されてもやりきるって大切ですよね。
それぐらいの意思があったんですね。
期限とか決めてましたか?

小形:27歳で会社を辞めたので30歳になって結果※が出なければ辞めようと思っていました。
※期限の30歳を直前に、あるアーティストの楽曲提供が既に確定していたため、30歳以降も音楽活動を継続。

鈴木:仕事をはじめて思っていたよりも大変だったことは何ですか。

小形:いやぁ~、全部大変ですね。笑 今の時代、マルチにできないと厳しいと思います。
一流のずば抜けた技術があればアーティストで良いと思うんですが。
会社を辞めるまで、自分自身はPCで音楽を作ったことがなかったので、MAC、音楽ソフトMOTUのデジタルパフォーマー、マイクなど、。
何も知らない僕は音楽仲間に教えてもらった機材を言われた通りそのまま買い揃えるというところからのスタート。
本当、一から、学びの毎日でしたね。すべてが大変でした。笑
あと、音楽は著作権という権利ビジネスでもあるので、その辺に関して、いろいろ慎重に対応していかないといけないというのは、最近、よりいっそう大変に感じている部分でもあります。

鈴木:なるほど、何でも挑戦するときはその世界へ飛び込む勢いが大切ですね!あと確かに著作権については稀にニュースで取り上げられますね。
近年、楽曲や歌詞にAIが活用されはじめていますけど、それはどう思いますか?

小形:AIの作曲ソフト。実はもう存在しています。3秒に1曲のペースで作曲する自動作曲ソフトもあるようです。
AIと音楽についても、いろいろと議論がありますが、僕の考えとしては、AIや自動作曲を全否定するのではなく、自分のツールの一部として、「AIに使われる側」ではなく、「AIを使う側」として、AIを活用していけたらいいなと思っています。

著作権についてはブロックチェーンにも注目しています。
音楽で利益が生まれにくい今、購入した楽曲をデジタル足跡で管理することで不正を防ぎ、利益を生み出す、そうすれば業界も違う形で上手く回る可能性も出てくるのではないかと思います。
ヨーロッパではもう、そういう試みが始まっているようです。

鈴木:まさに人間の期待が作り出した新しい技術だと思うので、社会へ良い影響があると良いな!僕も期待していますよ。
あとスマートスピーカーが浸透してきましたが、音楽がもっと手軽に試聴できる環境についてどう思いますか?

小形:アマゾンエコーなどですね、僕は音楽についてはマイナスな点も感じています。
プレイリストをAIが作ることが確立化されすぎて、ユーザーが主体性を持たず、AIにまかせてニュアンスで聴く音楽を選ぶ人が増えてしまうんではないかと少し不安視しています。
AIに主体性が移動してしまって、ユーザー自身の感性が弱くなるのではないかと。
誰々のアルバムのこの曲を聴きたい!というユーザーが主体性を持った聴き方、音楽の選び方は無くならないで欲しいですね!

鈴木:確かにそうですね。今の世の中を見ていて、検索の性能が上がったせいか、個人の知識力が知っているつもり化になってるなー!って思います。
だから堂々としている、周囲を気にしない若者が増えたなと〜。

小形:鈴木さん!若者についてはどの時代もそうです。年をとったってことですよ。笑

鈴木:作曲について最近の動向ってありますか?

小形:ありますね。昔だったら打ち込み音楽のデジタル感(ノイズがなくてクリア)がスゴイ!とか思うことも多かったんですが、それが逆に、今はデジタル技術を使ってノイズやアナログな荒さを表現することもあるんです。
より楽曲の中に人間感が出るように。おもしろい流れですよね。

鈴木:それは意外ですね!デジタル化は進むけど人間のクセや、らしさはアナログ感として消えずに残っていくものなんですね!
お仕事とは離れるのですが自身のブログの内容は音楽とは別のように見えますが、なぜはじめたのですか?

小形:ブログをはじめたのは会社を辞めたのを機にはじめました。当初は毎日書いていましたね、今は3日ペースですが。
動機は昔飼ってた愛犬の近況です、その裏テーマとしては、脱サラして成功していく音楽家のサクセスストーリーをブログに書いていくぞ!と目論んでました!笑 実際は、音楽活動について書くことなどたいして無く犬のことや雑学がほとんどを占めることになりますが。
あとは、自分のメディアとしても、このブログを位置付けています。ある種テレビと同じだとも思っています。
テレビは商品とは関係ないバラエティ番組などを楽しんでもらいつつ、CMで商品を宣伝しています。それと同じで雑学を番組として、人に読んでもらいながら作曲家としての意外な一面も少しづつコマーシャルしていけたらいいな。そういう発想でやってます。

鈴木:そうですね!プロフィールを羅列するよりも人間性が伝えやすいですね。

ちなみに、最近、誰かのブログで、影響(宣伝)を受けたものはありますか?

小形:ブログではないのですが、中田ヤスタカさんのインタビュー記事ですね。
楽曲のうしろに隠れず、作曲家はもっと前に出るべきではないかと。そのコメントに共感しましたね。
0から1を作っているわけですから。
自分の場合、もしブログがなければ人間性も含めた情報を自然に知ってもらうのは難しいのかなと思います。

だからブログは他の作曲家との差別化にも繋がっていると思っています。

鈴木:作曲家がブランドとして認知される社会になると良いですよね。

小形:そうですね。主語が大事です!誰が作ったのかにもっともっとみんなが興味を持って欲しいですね!

鈴木:旅とか食とかから影響受けることはありますか?

小形:旅!?最近行ってないなぁ~!人と会って話すことがインスピレーションに繋がっていますね。
手っ取り早く感性を感じあえるひと時。惑星と惑星の交流のようにも思えますね。
自分の中では一種の旅です。
普段は家で仕事をしているので人と会うのがとても貴重な時間なんです。
月1で「小形JAPAN」(通称オガジャパ)という交流会(食事会)を企画するほどです。

鈴木:人って同じ中身の人はいませんからね、だから面白いですよね!
ちなみに海と川どちらが好きですか?

小形:開放感がある広い海が好きですね、実家の頃は一人でよく車で出かけてました。

鈴木:圧倒される感覚が良いですよね。自分が小さく感じて、細かいこととか忘れますよね。

小形:あと、星空も好きです。普段、ランニングへ出かける時は良く眺めていますね!心のどこかで広い景色を求めている自分がいるんだと思うんですよね。

鈴木:宇宙好きですか?ダークマターとか

小形:はい!好きですね〜。変なスパイラルに入ると寝れなくなりますよね。笑
妄想ですが、火星の大気ではどんな音がなるのかなとか考えたりします。

鈴木:まさに、その想像力が作曲に結びついてそうで興味深いですね!!あとインスピレーションは人から!
自分自身、良い学びの日となりました。本日は、ありがとうございました。

鈴木:ここからは、番外編のコーナーですが近年ライブハウスの閉店が目立ちますが、僕自身は思うところがあって。
今まで僕の知っているライブハウスの印象って、出演者がライブハウスにとっての客。
だから一般のお客に対して、どこか冷たい対応をされることが多かったんです。
文化的に残って欲しい思いはあるんですが、どうしても僕自身、近年増えているカフェなどのイベントへ足を運ぶ回数が増えたなと。
この状況についてどう思いますか?

小形:それはおっしゃる通りだと思いますよ。
出演者はライブハウスという組織(会社)のSTAFFでもなんでもなく、ある意味、部外者なわけですからお客をどれくらい連れてくるとかという部分を、全面的に出演者に依存するのは経営学的視点から見ても少し不思議な図式だと思っています。ノルマとかも含め。
だから、ライブハウス自体が一般客を対象にした自主イベントをやることも結構大事なのではないかと思っています。
たとえば、毎週何曜日は~限定とか、ライブハウスが主体となったおもしろ企画がどんどん出てきてほしいですね。

鈴木:そうですよね!「お客を呼べる人へアポをとる=ライブ経営」これだと一つの時代で終わってしまい、続いていかないと思うんですよね。
あとノルマ制はちょっとな~。思うところがあります。
でも、社会の中でアーティストが発信できる場所で新しい可能性が生まれる場所でもあるので、今後も身守っていきたいです!

以上になります、どうもありがとうございました!!

すっかり打ち解けています。
周りのオブジェはどこか懐かしい
取材をしていた隣では所縁のある美空ひばりコーナーが並ぶ

 

■小形さんのお仕事
花王のリセッシュ

TOKIO Advance
https://ja.wikipedia.org/wiki/Advance/%E3%81%BE%E3%81%9F%E6%9C%9D%E3%81%8C%E6%9D%A5%E3%82%8B

YUKI STARMAN
https://ja.wikipedia.org/wiki/STARMANN

■今回のロケ地
世田谷邪宗門さん
東京都世田谷区代田1丁目31−1
03-3410-7858
http://jashumon-setagaya.la.coocan.jp/

About The Author

Hirosada Suzuki
高円寺を拠点に活動し発信する
人間好きなデザイナー
「未知と融合する楽しさ」を大切に
イベントやアートワークを展開

2012年からデザインを通じてアーティストを支援する。
PARODITCH ART WORKSを展開。
2013年からPRイベントFLYING DISC RADIOを開催
2015年にはFLYING DISC RADIO長野県の酒蔵「真澄」の松の間にて開催。
2017年よりFLYING DISC RADIOのWEBマガジンFDR ingを立ち上げる。

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