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flying disc radioのWebマガジン

アクリル絵の具を溶きながら

約 3 分

「クリスマスとホワッツマイケルの彼女」

私は小学校高学年ぐらいまで、本気でサンタクロースがいると信じていた。

12月になると母は、姉と私に向かって「クリスマスに欲しいプレゼントを手紙に書いて、窓際に置いておけば、サンタさんが取りに来てくれるからね」と言った。

私と姉はワクワクしながら張り切ってサンタクロースに手紙を書いた。

その頃「ホワッツマイケル」という、マイケルと言う名のオス猫が主人公のアニメが流行っていて(懐かしい)、マイケルには妻がいた。
私はそのマイケルの妻のぬいぐるみがどうしても欲しかった。

そのことを手紙に書き、キッチンの窓際に置いた。

そしていつのまにかその手紙は無くなり、夜にサンタクロースが持って行ったらしいという話になり、さらにワクワクした。

実際のところ、マイケルの妻は脇役であったためか、ぬいぐるみとして販売されていない様子であった。そして両親に第2希望のおもちゃはあるかと聞かれ、何の疑いもなく第2希望を答えた。

そしてクリスマスの朝、枕元にサンタクロースからの手紙と、第2希望のおもちゃ(ビーズマジックという、ビーズのアクセサリーが作れるおもちゃ)が置かれていた。

手紙には、「マイケルの奥さんは無かったよ、ごめんね」というような事が書かれていた。

今思えばそれは字の下手な父と同じ字体であった。

姉はというと、希望通りのおもちゃを抱えていた。
さらには、「朝方ベルの音を聴いたし、ドシンと音がしたので絶対サンタクロースは来ていた」と言い張っていた。
狂ったか?と思ったが、あまりに真剣に言うので私もすっかり洗脳されてしまった。妹にとって姉は絶対的立ち位置なのだ。

そのこともあり、サンタクロースが両親だと気がつくまで、ずいぶん時間がかかってしまった。

(ちなみに姉は今でもベルの音が聴こえたと言う!)

私はサンタクロースがいると信じていた方がクリスマスは格段に楽しくなると思っているので、自分の子供にはサンタクロースの絵本を読み聞かせているし、おもちゃも用意する予定だ。

日常に架空の世界があることの特別感は、小さな幸せにつながっている。

About The Author

Junko Kawashima
伊豆大島出身。
美術短大在学中よりイラストレーターとして活動。
CDジャケット、雑誌、文庫本表紙、壁画、アパレル系など
様々なイラストを手がける。
初の個展はアメリカのノースカロライナ州。
その後香港やマレーシアなど様々な場所で作品の発表を続け、
現在は子育てをしながら絵本を制作中。

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