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flying disc radioのWebマガジン

馬々の記

約 2 分

音楽の旅

音楽を作っていると頭の中で色々な世界を見ます。

日本の外へ出たことはあまりありませんが、作曲しているとよく見たことの無い景色が現れます。
とても具体的なはっきりした様子が見えてくる時は大体良い曲が書けた時です。

逆に、ある風景や体験から創作意欲が湧いて一気に曲を作る時もあります。
最初のアルバムに入っている「塔」という曲は学生の頃に住んでいたアパートでヴィンセントギャロの悲しい映画を見た後に突然出来ました。
何故か手に取った楽器はベースギターで、なんとなく弾いていたらすぐに歌が聞こえてきて、ヴィンセントギャロになった気持ちで歌っていました。
途中で、夕方に鳴るチャイムが偶然入り込んできたのですが、それがその瞬間歌っていた曲と合奏しているように重なりました。

さらにそのチャイムによって曲が一層エモーショナルに変化しました。

それまでに無い体験でとても興奮したのを覚えています。
環境や自然からは自分で意図しない音が聞こえてきます。
楽器では真似できないリズムや音色を持っています。

それらを沢山ストックして、サンプルのように使ってみようと思ったきっかけはこの体験でした。

私がドラムを叩いたり、ピアノも弾けるマルチプレイヤーだったらその方法は思いつかなかったと思います。

「塔」は「雑音」が曲の一部になることを初めて経験したという意味でも自分にとって特別な曲の一つです。
作曲している時、普段では無いほどに集中しているので自然と自分以外の誰かになっていたり、どこか別の世界を見ていたりするのだと思いますが、それは旅をしているような感覚です。

作り出し曲が進むまではどこに向かい、どんな景色が見られるかわかりません。
自分にとって、作曲を通してだけ体験できる特別な楽しさの一つです。

About The Author

Satomimagae
1989年生まれ。
東京を中心に音楽活動をするソロアーティスト。
2017年に3枚目のアルバム「Kemri」をリリース。

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