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flying disc radioのWebマガジン

懐新(かいしん)

約 3 分

3杯目「コメの話」

「やっぱス お米は日本の宝じゃの~」

このフレーズを見たのは、小学生の時に母親の故郷である秋田県の線路沿いの広告でした。
母親の実家は秋田駅から鈍行で一時間ほど奥羽本線に乗り、森岳という駅で降りて更に車で40分ほど。
実家は築300年くらいの屋敷ですが、隣は茅葺きの家 周りには自販機があるくらいで 集落のような所ですが、近所の人々は皆やさしくて 実家の縁側によく人も訪れてきて。大好きな場所です。

中でも いつも祖母が炊いてくれた米は柔らかいのにピンとしていて、甘くてモチモチ。
それがあきたこまちでした。

31年間色々と米を食べましたが、やっぱり一周回ってあきたこまちに戻り 食堂でも自宅でも使っています。

僕が好きなお店が中野にあるのですが、かれこれ5年ほど通っています。
そのお店はお母さん(僕は敬意で姐さんと呼んでいます)が45年間カウンターに立ち続けているのですが ここのお米がいつも美味しいんです。

姐さんは年齢を重ねても探求心が強く、日々発見をしては試して というのを繰り返しているのですが お米も然り、毎回ちがう産地のものを使って炊いているのだそうです。

中でも驚いたのは、お米をお湯で炊いているということ。

姐さん曰く「お米をネ、田んぼにいた時に戻してあげるの。保湿してあげるのヨ」と。
そうするとツヤが出て、ふっくらと美味しく炊けるのだと教えてくれました。

試しに言われた通りに炊いてみると、もう、炊き上がりから違いました。
米の一粒一粒が立っていてテカテカと 見るからに美味しそうに炊けていました。
今でもその作法で米を炊いていますが、お客さんからいつも言われるのはご飯が美味しいと。
おかげさんでおかわり率も高いです。

僕が好きな秋田の米を、敬愛する姐さんの教えで米を炊き 人々から「おいしい!」と喜んでもらえる。
とても嬉しいですね。
何でもやってみるものですね。

ご飯がおいしいと 心も話も弾みます。
加えて、一番驚いたのは姐さんは自宅でハイヒールを履くようにしていて常に姿勢を良くする努力を怠らないということ。

参りました笑

About The Author

Shintaro Tsurugaya
プロフィール
鶴賀谷伸太郎 1986年生まれ。
東京都高円寺出身。
文化服装学院を中退後、飲食業の道へ。鰻・割烹「味乃宮川」代々木「喰切・基」を経て、現在は(株)モーフィングがトータルプロデュースする あまた食堂の料理人として入社。地域に寄り添う食堂として根ざせるよう奮闘中。

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