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flying disc radioのWebマガジン

Walk around, Background -富山編-

約 5 分

第3回
富山の“人間交差点”が笑う

「ほとり座×HOTORI」の田辺さんとの濃密なトークを終え、外に出ると日が傾き始めていた。
少し時間があったので、総曲輪の裏路地に戻って界隈をぶらりと散歩してみた。
裏路地とはいうが人通りは結構多い。
カラオケホールや人気焼き鳥店、スナックなどが所狭しと並び、次々と人が扉の中に消えていく。
田辺さんの話だと、この近くに「フォルツァ総曲輪」があったというから、中心地になっていたというのは納得。

裏通り。本願寺の参道でもあるため石畳の道が続く。左手前は「スケッチ」
富山の有名チェーン店「秋吉」。いつでも満席という人気ぶり。

 

そして、とっぷりと日が暮れたころに訪れたのが、最後の目的地「日本酒厳選店 DOBU6(ドブロク)」。
日本酒を中心とした北陸の地酒と、地魚を提供する居酒屋だ。
DOBU6は「スケッチ」のはす向かいにある。

店長の土肥明さんに声をかけると「昼間もスケッチにいたでしょ、見てたよ」と人懐っこい笑顔で答えてくれた。
聞けば、小林さん、田辺さんとも仲が良く、富山のイベントに協力をしているという。

DOBU6が人と人がつながれる交差点に

「以前は別の場所で日本酒専門店を開いていたんだけど、都市開発でココに移転してきたのね。
人通りの多いこの場所で、音楽で人と人がつながる交差点になればいいな、と思うよ。
酒と食べ物がおいしいのは当たり前だからね、それ以上のものを提供したい」

ライブの準備の合間に、店内を案内していただいた。棚やカウンターの隙間にCDやレコードが所狭しと並ぶ。お客さんの雰囲気に合わせてBGMを変えているそう。

土肥さんは元ミュージシャンで、話を聞いていると音楽への並々ならぬこだわりを感じる。
ブッキングも自ら電話や打ち合わせを行い、じっくり決めるという。
「この間、ビルの3階にイベントスペースを作ったんだよ。富山のアーティストの表現の場を作りたくてね。いや~、大変だったよ!
今日はW.C.カラスさんのライブがあるから、ぜひ観て行ってね」

ビルの外観。1階がDOBU6、2階は土曜限定営業のバー「INABAR(イナバー)」、小さな小窓が見えるのが3階のイベントスペース。

 

アーティストと人が地続きの秘密基地

実はこの日、1階のDOBU6はクローズ。
2階の「INABAR(イナバー)」でドリンクを受け取り、3階のイベントスペースに入る仕組みになっている。
グラスを片手に古民家のような急な階段を慎重に踏みしめながら上る。
屋根裏部屋に行くみたいで、ちょっとワクワクしてくる。

イベントスペースではすでにライブが始まっていた。
打ちっぱなしのコンクリートで、むき出しの電球が風にゆらめく。
ステージがない地続きの空間で、W.C.カラスさんがギター1本で声を震わせていた。
高岡市在住で、木こりにしてブルース・シンガー・ソングライターという異色の経歴の持ち主だ。
スーパーマーケットやうどん屋など、身近な日常をテーマに歌う。
不揃いの椅子に座った大人たちがリズムに身を任せ、思い思いに体を揺らしていた。
まるで大人の秘密基地にいるよう。
振り返れば、階段の手すりに顎を付けて土肥さんが笑っている。
DOBU6に、W.C.カラスさんに魅力を感じるのはもちろんだが、何よりも心から楽しんでいる主催者に皆惹かれているのだろう。
ほろ酔いの頭でそんな事を考えながら店を後にした。

イベントスペースは満席。仕切りがないせいか、歓談したり、アーティストに声をかけたりとリラックスした雰囲気。仏像とクラプトンの写真が同じ空間にあるのが違和感なく不思議。

振り返れば、一日の出来事とは思えない目まぐるしい旅だった。
今回出会った人々は三者三様だが、共通しているのは「地元にこだわり、自分の感覚に正直なこと」。
さて、スズキ氏はそんな富山でどんなコラボをするのだろうか。
それは、11月のお楽しみ。
(終)

土肥明さんと記念撮影。土肥さんにつられてスズキ氏もこの笑顔

日本酒厳選店 DOBU6(ドブロク)
富山市総曲輪2-8-14

About The Author

Motoko Nakatomi
九州出身、中央線在住。
雑誌編集の姿を借りた音楽バカ。
たまーに、FDRでDJをしています。
最近は、クレーンの写真狩りに夢中。
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