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FDR ing SIDE REPORT〜旅道具のTORAYA編〜

約 8 分

旅を文化にしたい。その考えがあって今はものづくりがある。まず大事にしているのはそれです。

山に、フェスに、温泉に…たくさんの時間を共にして早十数年。そんな友人夫妻がブランドを立ち上げてもうすぐ2年が経とうとしています。

代表は大学からの付き合いである友人の浦壁利裕さん。
2016年1月 旅をするための道具を作るつくり手として、TORAYA EQUIPMENTを立ち上げる。
奥様の真弓子さんと共に今日もフル稼働です。

旅道具を提供するTORAYA EQUIPMENTの在り方とは?

利裕さんが裁断をし、真弓子さんがミシンを踏む大きな無垢の作業台をテーブルにして、淹れてくれた美味しい珈琲と、そしてニューカマー(天使過ぎ!)のベビちゃんを囲みながらゆったりとインタビューはスタートしました。

記者 鈴木(以下 S):では、ブランドコンセプトからお願いします

利裕さん(以下 T):TORAYAは旅をテーマにしているブランドです。
旅に出たくなるような機能があり、遊び心も兼ね備えたものを作ろう、ということが僕らの目的です。
旅の捉え方として、自分たちの中では距離や時間には重きを置いていなくて、一歩外へ出て、そこで出会う人達や自然から受ける影響、それが旅だと思っています。それぞれの想いで捉えてもらい、旅に出る方が増えれば良いな、と考えています。

S:開業のきっかけは?

T:昔からこれをやろう!と2人とも思っていたわけではなくて、ただお互いに、どこでも生きていけるようなことを仕事にしたいね、とよく話していました。
自分の中ではそれが「ものづくり」であることが大事なキーワードだった。
だから大学もそういう方面へ進んだし、デザイナーとして働く中で、奥さんは縫製の技術を持っているし、ならばやってみようかということで始めました。

S:旅に出たくなる道具「旅道具」を提供するにあたり、大切にしていることは?
T:やっぱり旅ってテーマが広いですよね。
計画的な旅行も、バッグパック一つのハードな旅も「旅」の一つであって、あまりその間に垣根を作ってものづくりをしているわけではないんです。
自分たちは山登りも旅、街歩きも旅、として捉えていて、どちらかに特化したものだと行動範囲が狭まる。どこへでも行けるようなフレキシブルなものを作って、提供するということは考えながらやっています。

真弓子さん(以下 M):旅とはこうです、と私達もあまり定義付けたくなくて、人それぞれでスタンスも考え方も自由でいいと考えているので、それがTORAYAのものづくりに表れていると思います。

T:うちの道具ってはじめからすごく使いやすいわけではないんですよね。
ちょっとクセがあったりして、日常や旅の中で使っていくうちに良さがわかる、だんだん自分のものになっていく、という感覚も旅道具の大事な部分の一つかなと思います。
機能的なギアではなく、あくまで「道具」としての提供にこだわっています。

展示会での一コマ。
TORAYAのザックは旅に出たくなるギミックやアイディアが満載。

S:現在は、アイデアをひらめくのが主に利裕さん。それに対して二人で意見を交わし、デザインやパターンに落とし込み、一つ一つ丁寧に仕上げていますが、デザインをする上でソースになっていることはありますか?

T:自分たちは江戸時代の旅文化に興味があって、当時のお伊勢参りや行商スタイルに影響を受けています。
江戸の人は外の世界に対して関心が高く、今のように旅が楽しみの一つとして根付いていたそうです。もちろん車やバイクや自転車がない時代に、徒歩や馬でする旅だから、道具や衣服に工夫をこらしていて、それがとても旅に適しているんです。
道具だけでなく、宿場なんかも結構システマチックだったりして面白いんですよ。
その時代のように旅を楽しんで欲しいという想いもデザインに落とし込んでいます。

S:真弓子さんが製品を作る上で守っていること、企画の上で楽しいと感じることはなんですか?

M:使う場面を想像して、どういう人がどういうところで使うかな、とか、シチュエーションに想いを馳せて構想している時はやっぱり楽しいですね。
製品を作っている時は、本当に基本的なことなんだけど、いかに早く、丁寧に、きれいに仕立てるか。もうそれに限ります!
ここは負荷がかかるからよりしっかり縫って..とか、ちゃんと丁寧に仕上げることで頭がいっぱい。
当たり前のことですが、やりたいことは本当そういうことなんです。
あと、うちは受注生産がメインだから、一人一人に宛名や、ひとことメッセージを書くのですが、注文してくれた時にこれ履いてどこそこに行くって言ってたな、なんて思い出しながらしたためるのも楽しいですね。

S:TORAYAは直接販売によってお客様と接しながら注文を受けるスタイルですね。
その理由を教えてください。

T:自分たちも旅をして楽しみながらやっていきたいということと、TORAYAの道具は旅という自由度の高いテーマで作られているものなので、良いところも、一見使いづらいかもと感じるところも含めて、対面で説明したい、というところにあります。
きちんと説明を受けないで購入した商品で、ちょっと使いづらいかも、と思うものって使わなくなるでしょ?ゴミになるものは作りたくないから、特徴も長所も短所も伝えたいなと思っています。
web販売のお誘いもありますが、今はこのやり方が良いと思っています。

S:今後の新商品の展開は?

M:定番品を作り続けたいと思っています。
ファッションの波に乗ってしまうとサイクルがとても目まぐるしく、流行が終わるとゴミが沢山出るでしょう?それだけは避けたい。
マイナーチェンジも改良もするんだけど、基本的には定番品をゆっくり長く作り続けたいです。
今、よくご注文をいただいているパンツにしても、アパレルとしてではなく、道具として定義して、ジワーッと長ーくやりたいですね。

365日いつも共にいてもらいたい。そんな想いから名付けられた365シリーズ。冗談抜きに毎日履いていたいほど体に馴染むのです!

S:大量生産、大量消費の相互関係が目立つ現状について、自分たちの取り組みも含めどう感じますか?

T:すぐに手が届くものに対しての消費行動は早いな、と感じます。
それと同時に、情報過多によって頭でっかちになっている、と感じることもある。
例えば、自分たちのテーマでもある「旅」にしても、お金や時間がなければできないと思っている人が多いように感じるのですが、考え方次第で全然そんなことはなくて。
その辺の捉え方とか楽しみ方が乏しくなっているのかな、と感じることもあります。
だからこそ「旅を文化に」という想いを軸にしている、というのもあります。

S:運営する上で難しいと感じること、今後トライしたいことはありますか?

T:2人だけのハンドメイドにこだわっているわけではなくて、仲間を増やしたいんだけどなかなか見つからないところかな。
こちらの理念とか思想まで、全て理解して欲しいとまでは言わないけど、信頼してお願いできる人を見つけることが今は難しいです。
でも、基本的に自分達は好きなこと、やりたいことしかしていません。色々苦労していることはあるけど、ストレスはほとんどないし、怒られないですし(笑)。

M:売れないかもとか、病気したらどうしようとか、その辺のことを全て自己責任と思えば、まあなんでもない(2人にっこり)

S:それは昔から2人の価値観が一致している強みですね

T:お互い無理しているわけではないんです。何かあったときでも、こういうものか、と思うところが似ているのかもしれないですね。

ものを大事にしている2人の持ち物が昔から好き。トルコで買ったグラスは珈琲との相性も良い。

T:やっぱり今後は仲間を増やして、ファクトリーを作りたいという想いは強いです。
単に増員して増産を目的とするのではなく、旅をテーマにしていることを活かして、色々なことに挑戦したいですね。

M:現状できることとして、ハンドメイドでものづくりをしているわけだけど、同じ想いを持った仲間と集い、子供や犬も連れてきていいよ、自転車乗ってきていいよ、とかいうファクトリーができたら楽しいだろうなぁ。
面白い職場、働くことが楽しい場所を作りたいから、生活の糧になるものはテーマに沿っていれば究極なんでもいいかな、とも思います。

T:これからも旅の楽しさが伝わるものづくりを続けていきたいですね。さて、次の行商の旅支度をしようかな!

旅道具トラヤ
http://toraya.equipment/

About The Author

Yukari Suzuki
伊豆大島出身。
工学部工業デザイン学科卒。

学生時代からほぼ毎日帽子を被っている自分に気付き、卒業間近 急カーブを切り帽子の世界へ。

2014年11月。群馬県みなかみ町の「泊まれる学校 さる小」にて、泊まり込みアートイベント「FAUVISME」を仲間と開催。
これにより、アーティスト、地域、食、生活、人との距離 を考え始める。

魚卵好き。

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