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flying disc radioのWebマガジン

「Walk around, Background -富山編-」

約 5 分

第2回
富山のイベント仕掛人と語る

HOTORI×ほとり座 代表 田辺和寛さん

「スケッチ」を出て向かったのは、中央通り商店街にある「HOTORI×ほとり座」。
野村さん曰く「普通のイベントスペースとはひと味違う、ジャンルレスな文化発信の場ですね。
代表の方は富山県内の大きなイベントにも関わっている注目株です」。
その代表の田辺和寛さんにお話を聞くことができました。
店の成り立ちや、活動する中で見えてきた富山の現状など、スズキ氏と語ります。

ー田辺さんは、東京で音楽活動をしていたと聞きます。なぜ、富山で店を始めようと思ったのですか?

「出身が富山県なんです。17歳からDJを始め、その頃からイベントにも関わっていて、23歳で夢を抱き上京しました。
しばらくはラップグループのDJとしての活動が主体でしたが、上京して5年目にソロ活動に転向。
順調に活動していたんですが、生活のために月に何本もこなしたり、やりたくない事でも我慢してやったりしていたら、身も心も疲弊してきて…これ、なんかちょっと違うなって。
そんな時に、三軒茶屋の『orbit』と出会い、スタッフとして働くようになり、音楽を扱うお店の内側に入り込んだ訳です。
ブッキングや店の方向性なども自由に意見交換し、やらせてもらえて、すごく手応えを感じました。
そこで、自分以外のDJやアーティストを紹介したり、色んな要素を企画として表現するのって楽しい!って気づいたんですよ。」

ーその感覚、僕もわかります。
イベントの成功はもちろん大切だけど、憧れの人に声をかけるきっかけになったり、お薦めの人を「こんないい人がいるんだよ」ってイベントを通して表現したりできるのはいいですよね。

「ただ、orbitで働いているうちに、東京は音楽で挑戦するにはベストな環境だけど、自分がやりたいような文化発信が難しいとも感じたし、埋もれてしまうのは嫌だなと思って。
東京は才能ある人が大勢いるけど、色んな意味での消費ペースが早い。そこに違和感があって。
その頃、富山のイベントに呼ばれることが何度かあったのですが、東京とは違う新しい風を感じて、地元である富山で挑戦するのも良いかもと思えたんです。
それで、6年前にUターンして、富山駅前にあるクラブ経営やイベント企画の会社『マイロミュージック』に就職しました。」

ーなるほど、富山に可能性を感じて、まずはライブハウスで働くことにしたんですね。

「はい。故郷の音楽シーンや文化を育てたいと思い描いていたんだけど…。いざ働いてみたら、思っていたより難しく、これは一筋縄じゃいかないぞって。」

ーうーん、思ったように行かないですね。

「店内のオペレーションや、イベントのブッキングの内容など、ある程度は自由にやらせてもらっていたので、充実感はありましたよ。でも、自分が考える地元に深く根付く音楽シーンってなんか違うなーとか、もっとローカルなところに入り込んでいくものも大事にしないとさ!と思って。
求めてばかりじゃ始まらないし、自分でそんな場所を作ろうと思い、3年前にイベントスペースとして『HOTORI』を始めました。」

中央通り商店街のなかほどにある「HOTORI×ほとり座」

ーやっと、夢のスタート地点に立ったわけですね。実際に店を始めてみて大変だったことってありますか?

「音量調整ですね。店が商店街のど真ん中にあるでしょ? 近隣から音が大きいと苦情が来て。
でも、単純に音を下げるわけにはいかないし。リハ中に何度も外と中を行ったり来たりして、ベストなラインを決めるまで試行錯誤の繰り返しでした。今となってはいい思い出です(笑)」

ーそれは地道な作業ですね(笑)。
地域に根差した活動をするからこそ、関心がない人がどう思うかを考えることも大切ですよね。

思ってもみなかった映画上映が、もう一つの顔に

ー現在、お店ではどんな風にイベントを行っているのですか?

「箱貸しはあまりなく、とにかく内容重視。スタッフが考えるイベントだとしても、持ち込みイベントだとしても、予算などを聞いて一緒に企画を固めていきます。
ライブやDJイベントはもちろん、トークショウをしたり、芝生マットを敷き詰めた親子の遊び場を作ったり、企画は無限大です。
さらに昨年11月末から映画の上映も始めました。」

ーそれが「ほとり座」ですね。

「隣のアーケード街にあった映画館『フォルツァ総曲輪』が昨年9月末に休館したのですが、富山の文化を育む貴重な場所だったんです。
休館を惜しむ人々からの声の中に、ここで映画上映ができないかという話があり、自分なりにその想いを受け止めて、昨年の11月末からシネマカフェとして再スタートしました。
作品のセレクトは、自分も含めたスタッフ達、映画に詳しい常連さん、元フォルツァのスタッフさんにも意見を貰ったりしながら、チョイスしています。
最大20席の小さなお店ですが、月に500~600人程のお客さんが足を運んでくれています。すでに常連さんも沢山いるんですよ。」

昼はシネマカフェ「ほとり座」としての顔を持つ。アート系やドキュメンタリーなど、上映作品はさまざま。

About The Author

Motoko Nakatomi
九州出身、中央線在住。
雑誌編集の姿を借りた音楽バカ。
たまーに、FDRでDJをしています。
最近は、クレーンの写真狩りに夢中。
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