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flying disc radioのWebマガジン

アクリル絵の具を溶きながら

約 4 分

「納豆の呪い その後」

私は半年ほど前にヨーグルトメーカーを購入し、ヨーグルトと甘酒をせっせと作っていた。

そしてそのヨーグルトメーカーの説明書の後半には、なんと「納豆のつくりかた」が書かれていた。

先日久しぶりに説明書を出して、そろそろ納豆でも作ってみるかとレシピを開くと、大豆を一晩浸水させるところから書かれていた。

いきなり一晩かかるのか!と、この時点で急激に面倒臭くなった。

しかしせっかくヨーグルメーカーを購入したのなら、この納豆作りをクリアしないと勿体無い!頑張れわたし!!と無理やり自分を奮い立たせ、次の日にスーパーに行き大豆を購入した。

しかし購入したは良いものの、結局面倒臭さが先立ち、大豆を放置したまま数ヶ月が経った。

その後キッチンの整理をしていたときに、見て見ぬ振りをしていた大豆と目が合ったような気がして、ようやく大豆を取り出した。

そして気になっていた消費期限を見たら、なんと期限から二日が経過していたのだ。

結構高い大豆であったので、捨てるわけにはいかない、これはもういい加減早く納豆にしないといけない!という事で、やっとやっと本格的に納豆作りを開始する事となった。

まず大豆をざるに入れて一晩浸水。思いのほか量があり、狭いざるの中で大豆たちは「ぎゅう」と唸っていた。

翌朝、ざるから大豆をすくいだし、2時間ほど鍋で蒸した。鍋をあけると蒸気の合間からふかふかの大豆達がのぞいていた。

そう、もう後戻りはできない。
面倒臭いなんて言っている暇はない。
大豆たちは準備万端だ。

市販の納豆を少量容器に入れ、お湯を注ぐ、これで納豆菌の移行は完了した。
目に見えない菌たちも、準備万端!

その容器にふかふかの大豆を入れ、あとは温度を設定をしてスタートボタンを押せば24時間後に完成している予定だ。

次の日タイマーが切れたのを見て、ふたを開けてみた。

そこには入れた時と変わらず大豆たちが「ぎゅう」とひしめき合っていた。

そして、においを嗅いでみた。

むむ、、、臭い。
なんですかこれは。

何とも言えぬ、食品とはいえないにおい、
例えるなら新品の洗濯機のようなにおい。
どう考えても納豆とは程遠い!!

怖くなり、とりあえず冷蔵庫に入れた。
冷蔵庫にいれたら、どうにかなる、そんなよくわからない漠然とした希望を抱き、その日は放置しておくことに。

次の日おそるおそる納豆をチェック。
見た目は何も変わらず、大豆達たちはじっとしていた。

すぐさまにおいを嗅いだ。

そしたら、なんと納豆のにおいになっているではないか!!
これはまぎれも無く納豆だ。
いつも食べている納豆のにおいと何も変わらない。

なぜ冷蔵庫に入れる事で完成に至ったのかは不明であるが、とりあえず完成した。

恐る恐る食べてみたが、問題なく納豆であった。
大豆の蒸しが甘かったのか、すこし歯ごたえがあるが、これがまた美味しい。
初めて作った納豆がこんなに美味しいとは思わなかった。手間ひまかけた甲斐がある。

私はとてもうれしくてたくさん食べた。
次の日もたくさんたくさん食べた。
そのまた次の日もたくさんたくさんたくさん食べた。
そのまた次の日も、、、。
減らない、、。

作りすぎたせいで納豆が全く減らず、納豆を食べることが日々のノルマとなり、最後は味もわからないまま必死に食べる事となった。

結論、納豆は、スーパーで買った方が良い。

雑に食べてしまって、ごめんなさい、納豆。

それにしても、納豆は出来上がるまでに手間暇がかかるのに、大粒小粒ひきわりも選べて、絶対に売り切れることも無く、さらに安価で栄養価も高く、毎日当たり前のように並んでいる。

改めて、納豆を作ってくださる方々に対して今まで以上の敬意を払うこととなった。

納豆よ、ありがとう!!!

この気持ちが私の納豆作りの大きな収穫である。

粒の大きさの納豆の呪いは、あまりにちっぽけな呪いであった事が判明した。

About The Author

Junko Kawashima
伊豆大島出身。
美術短大在学中よりイラストレーターとして活動。
CDジャケット、雑誌、文庫本表紙、壁画、アパレル系など
様々なイラストを手がける。
初の個展はアメリカのノースカロライナ州。
その後香港やマレーシアなど様々な場所で作品の発表を続け、
現在は子育てをしながら絵本を制作中。

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